いきなり！エンプティ！

チラシの裏面を見る

平日の正午直前。閑散とした新幹線のプラットホーム。
ベンチへとひとり舞い戻ったミカミカミミカは、
傍で立ち尽くしている男に茫然と目を奪われていた。
ミカは口をきつく結んだまま、脳内で呟く。

アタシは彼を知っている。
でも、彼は、アタシに知られているということを知らない。

彼のその顔がミカの記憶を蘇らせ、彼女の頭は、
これまでの連鎖的な死別と不可逆な失態に支配される。

…すべてはマイナスをばら撒き続けたアタシのせい。アタシがどんなつもりだったとしても、その結果だけがすべてなの…。

ミカは逃れようのない虚無を抱き、再び脳内での独り言を続けた。

―それもこれも、今日ですべてを終わらせる。忘れられない約束も、消えることなき空っぽも、なにもかも、すべてを。

――――――――――――――――――――――――――

平日の正午直前。閑散とした新幹線のプラットホーム。
ベンチの傍でひとり立ち尽くしていたワタモチワタルは、
突如として現れた女に茫然と目を奪われていた。
ワタルは口をきつく結んだまま、脳内で呟く。

俺は彼女を知っている。
でも、彼女は、俺に知られているということを知らない。

彼女のその顔がワタルの記憶を蘇らせ、彼の頭は、
これまでの消極的な選択と不条理な冤罪に支配される。

…人間は二択を必ず外すようにできている。また俺は、二択を選び間違えようとしているのか…。

ワタルは奥歯を噛み締め、再び脳内での独り言を続けた。

―それもこれも、今日ですべてを終わらせる。忘れられない約束も、消えることなき空っぽも、なにもかも、すべてを。